2018年11月02日
オフショアバンクの生命線 - 中継銀行
その国の国民・居住者と、その国の通貨を扱わないので、つまりはその国の経済自体に影響を及ぼさないように設計されているため、規制が緩和されていることによって銀行業としての自由度が高く、為替管理の成約も無いというのがオフショアバンクの一般的な特徴と認識されています。
ところが、外貨専門の銀行ということは、その外貨(USDやEURやGBP、あるいはJPY等)を監督する国・地域から銀行免許を取得するか、その外貨を扱う別の銀行と提携しないと送金業務が出来ない、ということになります。
一番確実なのは、その外貨を自国通貨として監督する国に「外国銀行」として登録することですが、これは同時に一番ハードルが高い方法である、とも言えます。ところが、その国の中央銀行にただ預けておく供託金だけでも数十億円相当の資金を用意しなければならないのでこれは容易ではありません。
そこで、多くの場合、別の銀行と提携し、その銀行を「中継銀行」として送金業務を行うことになるのですが、ここ最近はこの「中継銀行」が厄介な存在になってきています。
パナマ文書事件以降、明らかに「中継銀行」は (1) オフショアバンクとの中継銀行業務から撤退 (2) チュ系銀行業務は継続するものの、コンプライアンスチェックを大幅に引き上げる、のいずれかの対応になっています。時々、オフショアバンクが特定の通貨(ほとんどは USD ですが)の入出金が出来なくなるのは、今まで利用していた中継銀行が突然使えなくなったから、という理由が多く、その場合は、その銀行がオフショアバンクとの中継銀行業務から撤退した、というパターンであると考えられます。あるいは、中継コストを大幅に引き上げられ、コスト面から契約を打ち切らざるを得ないというケースもあるでしょう。
いま現在、中継銀行として使用されている(残っている)銀行は、コンプライアンスチェックを厳しくすることによって中継銀行業務を継続するパターンです。
この場合、オフショアバンクとしては自由に資金移動と管理ができることを謳っていても、実際の資金移動を中継する銀行がコンプライアンスチェック厳格化に伴う対応をするため、「送金元は誰なのか」「送金目的は何なのか」「それらを証明するものは何か」という具合に、非常に面倒な対応を要求されます。これらは、中継銀行側が受取先のオフショアバンク側に要求しているものであるため、オフショアバンクとしてはその銀行を中継銀行として使用している限りはどうしようもありません。
これらのことを踏まえ、スムーズな送金を行うための理想的な形は、同じ名義の口座をオンショアの銀行に開設し、その銀行から同一名義人同士の資金移動という形でオフショアバンクに送金する形態です。同一名義人同士の資金移動は、コンプライアンスチェックのハードルが格段に下がるので効果的です。
デメリットは、オンショアの銀行にオフショア法人の口座を開くということが、別途それなりに難しいということですが、背に腹は代えられないという状況であれば、腹をくくって対処するしかありません。
特に、節税目的でオフショア法人とオフショアバンクを使いたい人にとっては、ますます難しい局面が増えており、それに伴って必要コストもアップしている状況です。そうなると、普通に税金を払った方が安いのではないか?と思えるケースも多いのでなかなか悩ましいところです。
過去記事に記載の法人売却案件について
また、現在、このブログ上でオフショア法人の売却案件を直接取り扱うことは致しておりません(あくまで情報提供のみ)。
*過去記事記載の法人売却案件についてのお問い合わせを頂くことが多いため、ここに改めてご案内させて頂きます。
2018年03月18日
パナマ法人 管理システムの変更とAVISO登録法人への影響
パナマ政府は納税情報管理システムを刷新し、法人についても今後すべての法人が単なる「法人」として登録・管理され、厳格に運用される体制となります。
新しい管理体制下における所得税申告手続き(確定申告のようなもの)は、法人所得の源泉がパナマ国内かパナマ国外かを基準としています。
この国内源泉所得があるパナマ法人をカテゴリーA、国外源泉所得しかないパナマ法人をカテゴリーBとして分類されます。(ちなみに、パナマ法人は、領土内所得課税主義を採用しているので、いわば香港法人のような使い方が可能であり、この点を以てパナマ・オフショア法人と言われたりもします)。
実は、この2つのカテゴリー分けを行う新体制の実施により影響を受けるのがパナマでAVISOライセンス(主に金融業務)登録された法人です。
AVISOは、金融事業を含む特定の事業を行う際に登録するものですが、これは基本的にパナマ国内向けの制度です。
従来は、AVISO登録法人でも、パナマ国内からの収益が無ければ所得税申告手続きが免除されていました。しかしながら、今後は国内向けの制度であるAVISO登録法人は自動的にカテゴリーAに分類されることになります。
カテゴリーAに分類されることにより、実際にパナマ国内での営業実態が無くても毎年所得税申告手続きが必要になり、それはパナマの公認会計士が手続きすることになっているので追加費用が発生することを意味します。
事業運営コストを抑えたい事業オーナーにとっては悩みの一つになるかも知れません。
2018年01月01日
国内仮想通貨取引所で億り人になられた皆さんに迫る狩人たち
ビットコイン長者、国税がリストアップ着手 税逃れ対策
https://www.asahi.com/articles/ASKDP7G3JKDPPTIL03N.html
「ビットコイン」など仮想通貨の急激な値上がりを受け、国税当局は多額の売却益を得た投資家らの調査を始めた。数千万〜数億円の利益を得た投資家らをリストアップ。2018年の確定申告に向け、取引記録や資産状況をデータベースにまとめ、税逃れを防ぐ考えだ。
金融庁に首根っこを押さえられた 国内仮想通貨取引所 で取引して2017年中に億り人さんになった人達は逃れようがないですね。
かつて、FXで大儲けして、後から申告漏れを指摘される事件がありましたが、しばらくは仮想通貨で儲けて脱税で逮捕される事件が増えるかも知れません。
国内取引所ユーザーで、既に儲けた金を使ってしまって手元に納税に回せる資金が無い人は、もう一発当てに行くしかないでしょうね。
ますます海外取引所ユーザーが増えそうです。
2017年10月27日
EPBはセントビンセントからプエルトリコへ
Euro Pacific Bank(ユーロパシフィックバンク)のライセンス管轄が、セントビンセントグレナディーン諸島からプエルトリコに変更となりました。
https://europacbank.com/support/notice-regarding-jurisdiction-change-20171020/
プエルトリコ(Puerto Rico)はアメリカ合衆国の自治領(コモンウェルス)。アメリカであり、アメリカで無い。プエルトリコは、オフショアバンクの観点から非常に面白い国といえます。
一般人から見れば、プエルトリコは「ハリケーンで壊滅的打撃を被ってしまった国」という印象ですが、金融口座自動交換制度の開始にやきもきしている一部の層からは、プエルトリコにいま熱い視線が注がれています。