3月。日本に「ひな祭り」があるように、外国にも春のお祭りがある。
例えば、ブルガリアのマルテニッツァ(Martenitsa)。
"マルテニッツァ"とは、赤と白のヒモで作った腕輪や人形のこと。 画像
それは、ちょっと日本の紅白グッズに似ている。
毎年、3月1日にブルガリアの人は自分の親しい人にマルテニッツァを贈る。
受け取った人は、そのマルテニッツァを身につけ1年の健康を願う。
マルテニッツァは、コウノトリがやってくるまで身につけておき、コウノトリがやってきたら庭の木に結わえる。
あるブルガリアの友人いわく、この伝統行事は1,000年の歴史があるという(ひな祭りの起源が平安時代といわれているから良い勝負だ)。それは、おそらく長い冬の終わりと春の訪れの喜びを象徴するのだろう。
このマルテニッツァの時期には、この時期特有の挨拶言葉がある。
「Chestita baba Marta, ○○!(チェスティタ ババ マルタ、○○さん!)」
チェスティタは「おめでとう」、ババは「お婆さん」、そしてマルタは「3月」。
ブルガリアでは、3月だけが「女性形」の月。3月は女性の月なのだ。
実はババ・マルタはかなり老齢の婆さんで、いつも杖をついて歩き、しかも気性が荒い。
機嫌の悪いときは天気が荒れ模様。逆に機嫌の良い日はポカポカ陽気。
つまり、マルタ婆さんとは寒暖の差が激しい3月のまさに化身というわけだ。
なお、かの友人はブルガリアの首都ソフィア市に住んでいるが、都市部にはコウノトリがあまり飛来しないのでこの伝統行事にとって苦労するという。
それでも、ブルガリア人はこの伝統行事がとても好きなんだよ、と言っていた。
季節感が乏しい都市部でも昔ながらの伝統行事が当たり前のように行われるのは、ブルガリアだけでなく日本も同じ。
かえって季節感のない都市部では、敢えて季節感を出すために伝統行事に力を入れるようになるかも知れない。