今年2月に成立し、7月から施行される中国版有事法制「国防動員法」。
なぜかテレビや新聞ではあまり扱われていないこの法律ですが、人民元切り上げのタイミングと相まって、かなり強烈なインパクトを与える内容となっています。
基本的には、有事の際には民間人・民間企業を徴用するという内容ですが、その対象がスゴイ。
- 中国国内の中国人はもちろん、国外にいる中国人
- 中国国内にある外資系企業とその従業員
例えば、同じく7月1日から中国人の日本への観光ビザ発給要件が緩和され、中国人観光客が10倍に増えると見込まれていますが、国防動員法が発動された場合、これら中国人観光客はすべて中国政府(人民解放軍)の指揮下に入ります。
普段は羽振りの良い観光客(ビザ発給緩和後、年収80万円の人が日本で観光が可能なのかは多いに疑問ですが…)でも、ある日突然、中国軍として活動を始めるかも知れません。
中国人でなくても、中国国内にある日本の会社に勤めていれば、その人は中国政府の指揮下に入ります。ユニクロの社員がいきなりミサイルを作らされるということはないでしょうが、中国国内で生産している商品が通常通り出荷出来るかどうかは多いに不安がありますし、軍事転用可能な技術を持っている企業であれば、ズバリそのまま軍事工場になってしまう可能性はあります。
この法律の成立・施行を以て中国が戦争を始めるつもりであろうとは思いませんが、法律面での整備は完了したと言えます。中国に進出している(または進出を検討している)企業は、この新しいチャイナリスクを十分認識する必要があるでしょう。
某インターネット検索サービス会社のように、事業内容の修正変更あるいは中国撤退を考えなければならない企業もあるかも知れません。
この法律によって、ある意味、中国政府は合法的に世界を中国化する手段を手に入れました。
とはいえ、このご時世、チャイナフリーで生活するのは極めて困難です。
世界経済が中国を抜きにしてはもはや成立しないレベルまで来ている以上、健康で文化的な最低限度の生活を営むためには中国とのお付き合いを断るわけにいきません。
とすれば、リスクを受忍して生きていく必要があるわけですが、大切なのはそのリスクの内容を理解し、それに対する備えをしておくことです。
奇しくも7月1日は「国民安全の日」。
今一度、"防災"意識を高めるときかも知れません。