1月27日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は27日午後、都内で講演し、コマーシャルペーパー(CP)や社債など民間の金融資産の買い入れについて、中央銀行が個別金融市場や個別企業の信用配分に強く介入するようになると、現在はそれなりに正常に機能している市場が機能を低下させるという「逆説的な結果をもたらしかねない」とした上で、日銀の買い入れる額が「大きいほど効果があるというわけではない」と述べた。

日銀は22日の金融政策決定会合で、CPの買い入れを総額3兆円を上限として3月末まで時限的に実施するとともに、残存期間1年以内の社債の買い入れについても検討することを決定した。白川総裁が講演を行ったのは、日本国内で活動する外資系金融機関の業界団体である国際銀行家協会(IBA)のフォーラムで、演題は「国際金融危機の下での外国金融機関」。

白川総裁は外国金融機関のシェアが「外国為替取引については、2007年4月に行われた直近のサーベイで67%、デリバティブ市場の取引は68%に上るとの結果が示されている」と指摘。外国金融機関のウェートが高まるということは「以前に比べて、海外の金融市場や金融機関の動向が進出相手の経済にも影響を与える程度が増大しているということも同時に意味している」と述べた。

具体例として「ここ数年、外国金融機関はわが国の不動産市場における有力な資金供給主体だったが、07年の秋ごろから外国金融機関の不動産ビジネスは急速に縮小に向かい、わが国不動産市場の取引の低下をもたらした」と指摘。また、外国金融機関はこれまで証券化ビジネスなど、国内の金融機関の取り組みが必ずしも十分でない分野で大きな存在感を有していたが、「流動性制約が厳しくなるにつれ、このプレゼンスにも変化がみられている」と述べた。

 国際金融危機の教訓

さらに、昨年9月の米リーマン・ブラザーズの破たん以前は、国債市場やスワップ市場において「ヘッジファンドを含む海外の投資家が裁定行動を通じて市場流動性を供給する役割を果たしていた」が、破たん以降は「リスクテイク能力の低下から裁定活動が不活発となり、市場流動性は大きく低下した」としている。

白川総裁は国際金融危機の教訓として、母国以外で活動する外国金融機関の流動性管理の体制を構築することの重要性を指摘。「流動性はいつでも必ず調達できるわけではない」とした上で、「調達源として相対的に安定性の高い一般顧客からの預金の重要性があらためて認識される」と述べた。また、外国で活動する金融機関にとって、進出国で一般顧客からの預金を獲得することは容易ではないため、「自国通貨を他国通貨に変換する為替スワップ市場が正常に機能していることが極めて重要となる」と語った。