−消費需要低迷で在庫積み上がる=3期連続のマイナス成長は不可避−

【2009年2月1日(日)】 − 先週末(1月30日)、米商務省が発表した2008年第4四半期(10-12月)実質GDP伸び率(季節調整済み、前期比年率換算)の速報値は−3.8%となり、1982年第1四半期(1-3月)の−6.4%以来26年ぶりの大幅低下となった。

 また、前期(7-9月期)の−0.5%に続いて2四半期連続のマイナス成長となり、これは、リセッション(景気失速)となった1990第4四半期の−3.0%と1991年第1四半期の−2.0%の2四半期連続マイナス成長以来17年ぶりだ。

 リセッションの定義である2四半期連続のマイナス成長となったが、NBERの景気循環委員会はすでに米経済は2007年後半からリセッションに入ったと発表している。また、2008年全体のGDP成長率は結局、+1.3%となったものの、2001年以来7年ぶりの低成長だ。

 明るい材料となったのは、アナリストの事前予想のコンセンサスである−5.5%までは低下しなかったことだ。成長率が予想よりも低下しなかったのは、GDP押し上げ要因である企業在庫が増加したためだ。しかし、好景気の時の在庫増加とは違い、今回の場合は、不況下の在庫増大、つまり、個人消費が伸びないため、モノが売れずに在庫だけが積み上がっているという最悪の状況である。

●2009年第1四半期以降もしばらくマイナス成長続く見通し

 しかし、エコノミストはこの在庫増加の影響が次の2009年第1四半期(1-3月)GDP伸び率に現れると見ている。つまり、第1四半期は、積み上がった在庫の削減が進むため、GDPの伸び率が押し下げられる結果、第1四半期のGDP伸び率は今回よりも大幅に低下し、3四半期連続のマイナス成長になる可能性があるからだ。

 また、一部にはマイナス成長は2009年中の数四半期まで続き、その後、景気が回復しても2010年末までは潜在成長率を下回る緩やかなものになると見ている。

 今回発表された第4四半期の企業在庫は、前期比62億ドル増となり、第2四半期(4-6月)の506億ドル減と第3四半期(7-9月)の296億ドル減から一転して増加している。この増加はGDP成長率寄与度+1.32%ポイントだった。

 しかし、実質最終売上高(GDP−外需・民間在庫投資)で見た個人消費が第3四半期の前期比年率+1.3%から第4四半期は同−5.1%に転じたため、GDP成長率は全体としてマイナス成長となっているのだ。

 もう一つの明るい材料は、インフレ動向を示すPCE(個人消費支出)物価指数が、前四半期の+5.0%から−5.5%となり、インフレ懸念が消えたことだ。これは昨年夏以降の原油などのエネルギー価格の急低下によるもの。また、コア指数(値動きが激しいエネルギーや食品を除く)も前期の+2.4%から+0.6%に伸びが大幅に鈍化している。

●個人消費、2四半期連続のマイナス成長=ただ、実質所得は改善

 主な内訳を見ると、GDPの約3分の2を占める個人消費は、前期比年率−3.5%となり、前四半期の同−3.8%に続いて2四半期連続の大幅低下となった。特に、自動車など高額商品からなる耐久財消費支出は同−22.4%と、前期の−14.8%を上回る落ち込みようだ。

 ただ、インフレ率の低下で実質賃金が伸びたことは明るい材料。第4四半期のインフレ調整後の実質可処分所得の伸びは、前期の−8.8%から+3.3%になったほか、2008年全体でも+2.6%となり、2007年の−0.7%から大幅に改善している。

●企業設備投資と住宅投資、依然、GDPの足かせ要因=輸出減も響く

 一方、企業設備投資は、前四半期の−1.7%から−19.1%へと急激に悪化した。これは、1975年第1四半期の−22.4%以来33年ぶりの大幅低下だ。GDP寄与度も−2.3%ポイントと、足を引っ張っている。特に、非居住用建物投資が−19.1%と、1975年以来33年ぶりの大幅減、機械・設備投資(ソフトウエアを含む)も−27.8%と、50年ぶりの大幅減となっている。

 また、住宅投資も−23.6%(前期は−16.0%)と、12四半期連続のマイナスの伸びで、GDP寄与度も−0.85%ポイント(前期は−0.60%)と、依然、GDPの押し下げ要因となっている。

 一方、公共投資である政府消費支出は、前期比年率+5.8%となったが、前期の同+13.8%に比べてGDP寄与度は低下している。また、外需を示す純輸出のGDP寄与度は、輸出が−19.7%と、1974年の第3四半期の−19.9%以来の大幅低下となったことから、+0.09%ポイントにとどまっている。

●FRB、景気対策で長期国債の直接買い取りを示唆=28日のFOMC会合で

 これより先、FRB(米連邦準備制度理事会)は1月28日のFOMC(公開市場委員会)会合で、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を0-0.25%のレンジのままで据え置いた。8対1の賛成多数で全員一致ではなかったが、これは1990年の誘導目標の導入以来最も低い水準だ。

 しかし、今回最も注目されたのは、FRBは必要な場合、米国の長期国債を直接買い取る可能性が示されたことだ。これは、反対投票を行ったリッチモンド地区連銀のジェフリー・ラッカー総裁が、短期金利の誘導目標を操作するよりも、FRBが直接、長期国債の買い取りを実施して、マネタリーベースの拡大を優先すべきだと主張して反対したからだ。

 また、政策決定後に発表された声明文でも、長期国債の買い取りについて、「クレジット市場を回復させる上で必要と判断した場合には、FOMCは長期国債を買い取る用意がある」と明確に述べている。

 この点については、ベン・バーナンキ米FRB(連邦準備制度理事会)議長も昨年11月に、FRBは長期国債を買い取ることは可能だという見解を明らかにしており、長期国債の買い取りは現実味を増してきているといえる。

 FRBが長期国債の買い取りを検討するのは、それによって国債価格が上昇、債券価格と反対方向に動く利回りが低下、その結果、銀行の貸出金利や住宅ローン金利の低下を促すことになるからだ。しかし、エコノミストの中には、国債の利回りが人為的に引き下げられると分かったら、海外の投資家は米国債を買わなくなるリスクの方が大きすぎると批判する向きもあるようだ。 (了)