FACTA(ファトカ)とはアメリカの税法である「外国口座税務コンプライアンス法」(Foreign Account Tax Compliance Act)の略称です。米国人が海外口座を使って租税回避を行うことを阻止するため、米国人が米国外に所有する金融口座の情報を捕捉し、米国外の金融機関に報告義務を課すことが主な内容です。
このFATCAは、事実上、全世界の金融機関全てを対象とする極めて面倒な法律であり、金融機関としては、政府間の取り決めや米ドルを取り扱うための都合上従わざるを得ないものです。これにより、否応にもコンプライアンスコストが跳ね上がるため、事業収益の圧迫原因となります。
FACTAは、2014年7月から運用されていますが、ここへ来て明らかに銀行の運営方針の転換例が目立ってきました。
この運営方針の転換というのは、つまり銀行にとってあまり旨味の無い小口顧客の排除です。
例えば、HSBC香港で銀行口座を開けにくくなった、というのは1つの具体例でしょう。
原因がFACTAにある限り、もちろん口座開設ハードルが引き上げられているのはHSBC香港だけではありません。その他の銀行も徐々に口座開設のハードルが上がってきています。
口座開設のための必要書類や提出情報が増える、というケースもありますし、口座開設時の最低預入金が引き上げられるという例もあります。
また、米国FATCAに限らず、欧州EUにおける金融商品、サービス、市場に関する規制を定めた金融商品市場指令(MiFID)の大幅な見直し[MiFID II]によるコンプライアンス規制強化もますます口座開設難化に拍車を掛けるでしょう。
日本の当局が日本人の海外への資金移動を規制しなくても、徐々に世界の側が入り口を閉ざしつつある状況です。
そして、日本国内でマイナンバー制が完全稼働すれば、ますます資金移動は困難を極めるであろうことは明かです。
気がついたときには籠の中、というのは何とも恐ろしい事態ですね。