自力再建を断念した道内最大の百貨店「丸井今井」(畑中幸一社長)は29日、札幌地裁に民事再生法の適用を申請し、開始決定を受けた。負債総額は約502億円。一方、三越伊勢丹ホールディングス(HD)はHD傘下の伊勢丹による営業支援を継続し、出資などの経営支援を検討すると発表した。三越札幌店と丸井今井を傘下に置く地域会社を設立する案も浮上している。

 丸井今井によると、札幌本店は営業を継続、函館、旭川の2店舗は営業を継続しながら採算性を検討する。従業員計1511人は希望退職などを募り削減する。畑中社長は記者会見で「未曽有の不景気で資金繰りが悪化し、このまま事態を放置すれば資金繰りがショートする。最悪の事態を回避するため(民事再生法の)開始決定を受けた」と述べた。

 畑中社長は三越伊勢丹HDに営業支援継続とスポンサー就任を要請した。伊勢丹は05年、2度目の経営危機に陥った丸井今井に営業担当の役員を派遣。06年には5億円を出資するなど再建を支援し、現在は丸井今井株の13%を保有している。

 丸井今井は88年、4代目社長に就任した創業家出身の今井春雄氏が経営多角化を推進し97年1月期に年商1320億円を計上した。一方で今井氏が手掛けた不透明な海外不動産投資が失敗に終わり、97年にはメーンバンクだった北海道拓殖銀行の破綻(はたん)をきっかけに経営危機が表面化した。

 05年には会社を新旧に分割。札幌本店と旭川、函館の主力3店による新会社が、伊勢丹と「北海道企業再生ファンド」、地元金融機関の支援を受ける形で再建に取り組んでいた。しかし消費低迷に加え大丸の札幌進出が追い打ちとなり、08年1月期の売上高は前期比7.7%減の815億円、当期赤字は43億円を計上。08年12月末時点で少なくとも5億5225万円の債務超過に陥った。

 丸井今井は1872(明治5)年、今井藤七氏が今井呉服店として札幌で創業。1919(大正8)年に株式会社化。主力3店と室蘭のほか、かつては小樽、苫小牧、釧路の計7店を展開した。【仲田力行、立山清也、小倉祥徳】